ギャラリー展示
路上の人


路上の人
©2008 Studio Ghibli

昨年10月、県立神奈川近代文学館で「堀田善衞展 スタジオジブリが描く乱世。」が開催されました。「乱世」をキーワードとした二部構成の第一部は創作ノートや原稿などによって、堀田善衞自身や作品の背景を紹介するもの。第二部はスタジオジブリが「堀田善衞作品のアニメーション映画化を試みる」と想定して、映画制作の核となるイメージボード等を制作、展示しました。その題材の1つが今回展示する『路上の人』です。

『路上の人』は13世紀前半のヨーロッパを舞台に、主人公ヨナ・デ・ロッタの浮浪の旅を描いています。ヨナは騎士や僧侶、旅芸人などの供をして生計をたてながら、国家が成立する以前のヨーロッパ中を旅します。その旅の途上でヨナは数々の出来事を目撃していきます。貧困、盗賊、教会権力の絶対性、破戒的な僧侶、無垢な信仰心、異端、十字軍の残虐......。それらを上目遣いに見ながらヨナは考えます。なぜだ?と。路上から現実を直視し続けたヨナは、まさしく堀田善衞の生き方そのものです。信仰とは何か、生きるとは何かを問うた『路上の人』。乱世の時代を生きる人々、混沌とした中世ヨーロッパ世界を宮崎吾朗とスタジオジブリの美術スタッフが描きました。不安定な今の時代だからこそ、堀田善衞作品を読んでほしい。その願いが込められた展示となっています 。

【展示内容】
スタジオジブリが「堀田善衞作品『路上の人』のアニメーション映画化を試みる」という想定で描いた映画制作素材

  • ポスター
  • イメージボード(パネル含む) 79点
  • 美術ボード(パネル含む) 6点
堀田善衞(1918~1998)
1918年、富山県高岡市に生まれる。慶應義塾大学仏文科卒業。1942年、国際文化振興会に就職し、1945年に中国に渡り上海で敗戦を体験する。その後、中国国民党宣伝部に徴用され、1947年帰国。1951年に『広場の孤独』『漢奸』などで芥川賞を受賞。受賞作である『広場の孤独』で描かれた、歴史の大きなうねりに翻弄されつつも時代と向きあおうとする人物像は、この後も一貫して作品の中に登場する。その後、長編では『歴史』『審判』『海鳴りの底から』『若き日の詩人たちの肖像』などを執筆。同時にアジア・アフリカ作家会議の事務局長、議長も歴任した。近代化していくスペインの変化の中で歴史の観察者として 絵筆をとりつづけた『ゴヤ』四部作で大仏次郎賞を受賞。1977年より約10年間にわたってスペインに移住 。その後も『定家明月記私抄』(正続)、『路上の人』、『ミシェル 城館の人』(全三巻)など、乱世の観察者たちを主役に、文明と歴史を考える作品を精力的に執筆した。1998年、80歳で死去。

会期: 2009年1月28日(水)~2009年4月6日(月)
場所: 三鷹の森ジブリ美術館 2階ギャラリー
原案・監修: 宮崎吾朗