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海の向こうは、不可思議の国だった。
アラビア人の乳母ジェナヌに、まるで兄弟のように育てられた、青い瞳のアズールと黒い瞳のアスマール。領主の子アズールは青年となり、幼い頃聴いた乳母の子守歌を頼りに"ジンの妖精"を求めて海を渡る。
しかし、苦難の末に辿り着いた憧れの国で、最初に聞いた言葉は「青い目は不吉」。一方、乳母ジェナヌとその子アスマールは、すでに海を渡り、ここイスラムの地で大富豪となっていた。領主の子と使用人の子という関係だったアズールとアスマールは、海を越えただけで何もかも逆転してしまう。
仕方なく盲目のふりをして歩き出したアズールにとって、この国のすべては醜くまた不可解なものばかりだった。しかし、ジェナヌをはじめ、物乞いのクラプー、シャムスサバ姫、賢者ヤドアなど、異国の文化や言語の中で逞しく生きている、個性的で魅力的な人々と出会っていく中で、この国の本当の美しさを発見してゆく。個々の付き合いこそ、人種や民族、文化圏の間にある偏見を乗り越えるための第一歩なのだ。
人工的に作られた迷信や誤解によって、異なる者同士が争い合っている世界。様々な違いによって区別され差別される社会構造。オスロ監督は、このような現代にむけて、人々が相互に理解し合い融和していく為の、希望に満ちたこのお話を、とびきり美しくまた面白く語っているのだ。