映画『トゥ・リアン』
Tout-Rien(1978年 / 11分)
生きものたちを次々と作り出していった創造主が、最後に人間を作る。しかし、人間は欲望を膨れ上がらせ、殺戮を繰り返してしまう...。ツヤ消しのアセテートフィルム(セル)にプリズマカラーと呼ばれる色鉛筆でスケッチ風に描くというスタイルが編み出され、後に続く作品で発展継承されていく。アカデミー賞短編アニメーション部門ノミネート。
映画『クラック!』
CRAC!(1981年 / 15分)
フレデリック・バックの長女、スーゼルのアイデアをもとに、一脚のロッキングチェアが辿る運命を通じて、失われつつあるケベックの伝統的な生活や文化、家族愛、自然への共感、現代文明批判などをユーモラスに描く。「トゥ・リアン」でのツヤ消しセルに色鉛筆で描く手法は、フレデリック・バックならではのものとして定着した。アカデミー賞短編アニメーション部門受賞。
映画『木を植えた男』
L'Homme qui Plantait des Arbres(1987年 / 30分)
羊飼いのエルゼアール・ブッフィエは、たった一人で荒地に木を植え続けていた。ブッフィエの無償の行為は、不毛の地に緑をしたたらせ、生命の輝きに満ちた場所に甦らせた。ジャン・ジオノの原作に感銘を受けたバックが、5年半の歳月をかけ、2万枚におよぶ作画作業の大半を一人でこなして作り上げた代表作。また、コンピュータ制御の撮影台を使い、より高度で複雑なカメラワークを見せている。前作に続きアカデミー賞短編アニメーション部門受賞。そして、この映画に感動した人々による植樹運動が世界中に広がりを見せた。
映画『大いなる河の流れ』
Le Fleuve aux Grandes Eaux(1993年 / 24分)
北米を流れる大河、セント・ローレンス(サン・ローラン)河を舞台に、河に生きる生命の力強さと、生態系を破壊し汚染する人間の愚かさをドキュメンタリータッチで描く。映画は最後に、「未来に向けてどうすべきか」という問いを見る者に投げかけるように終わっている。緻密な描写を極めた作画、水中から地上、空へと目くるめくように移動し変化するカメラワーク、複雑なオーバーラップ技法を駆使した撮影など、これまでの技術をさらに深化させた映像を見せた。アカデミー賞短編アニメーション部門ノミネート。