2000年10月


10月02日(月)
原画描き起こし用に安西さんが選んだ「魔女の宅急便」のカット番号と指示書をもとに、三好さんがポジデータの入手やビデオからの画像選びや見本のプリントアウトに追われる。

図録の編集候補のプロダクションとスケジュールが合わず、編集依頼を見合わせることに。早急に新たに編集プロダクションを見つけなければならない。

ネコバスの模型第一弾が出来上がる。クッションの仕掛けや材質などが決まる。しかし宮崎監督から形に関してチェックが入り、安西さんと顔を整形したり高さを変えたりしていた。


10月03日(火)
「展示物の元絵や原画が描ける人がほしい」との展示チームの悲鳴に、宮崎監督が心当たりの方に依頼するもあえなく断られる。しかしその後、超ベテランのアニメーターの方に今週土曜日に原画をお願いすることになる。

ネコバス模型の顔の整形を安西さんが粘土で仕上げていたのを見て「こんなことやってる暇ないでしょ」と監督。昨日整形をやり出したのは監督なのだが。

建築図面チェックの締め切り間近で安西さんは図面とにらめっこ。


10月04日(水)
宮崎監督から、3スタを占領しつつある立体展示物の試作を二馬力に片付けよとの指令を受ける。3人がかりで立体物を一つ一つ解体して運び、二馬力で再び組み立てる。おかげで少しは3スタも広くなったか。

ネコバスの制作業者と打ち合わせ。変更点を伝えると、担当の方は力なく笑ってた。
その他もろもろの制作物の確認やグッズ購入、倉庫の手配など業務は山積み。しかし、まだまだ注文があっても充分対応できるそうなので心強い。


10月05日(木)
昨日片付けて空いたスペースにジブリのそばにある倉庫から長机を運びこんだり、調布の倉庫へ戻す資料を車につめこんだり、と朝から肉体労働が続く。
展示用35㎜カメラが届けられる。制作業者とフィルムが装置の中を縦横無尽にぐるぐる回っている展示物の話もする。ビュワーを使ってフィルムが見られる仕掛けの簡単な図面を作っていただいた。積極的な提案に今度はこちらがリアクションをせねば。

新入りプリンターのサーバーの調子が悪い。メーカーの担当者が苦闘するも直らず、結局持ち帰ることに。

石光さんと三好さんがジブリスタッフから借りた背景画のスキャニング作業に終始。資料が多いのはありがたいがその整理が大変。


10月06日(金)
安西さんと北嶋さんが美術館の窓にはめこむステンドグラスの打ち合わせに建築現場に向かう。まだ現場に行ったことがない三好さんも便乗して初の現場見学。想像していた大きさと実物とのギャップに、三好さんはこれに展示物が全部入るのかと心配になる。ちなみに橋田さんは展示物ではなく、お客さんがそんなに入れるのかと心配し、落ち込んでいた。


10月07日(土)
三鷹市の公会堂で「ジブリ作品と子供の世界」と題してジブリの鈴木敏夫プロデューサーによる講演会が開催。事前にジブリの某スタッフが詳細な原稿を苦労して用意したらしいが、それとは全く違った内容の話になったらしい。しかし、大変面白い講演だった。

ムゼオは、駅前コミュニティセンターで「開館まであと1年 三鷹の森ジブリ美術館」という小さな展示会を開催。美術館のイメージボードと作業の進捗状況を紹介したパネルを展示した。3連休の初日、運動会シーズン、第1土曜日というダブルパンチで昨年より若干入場者は少なめで、明日の日曜日に期待したい。


10月10日(月)
一昨日、ムゼオから唯一ツール・ド・信州に出場した三好さんは、ヘロヘロになりながらも下馬評を覆して完走。成績はお世辞にも誉められたものとはいえないが、いつも以上の難コースを、前回みたいにリタイアせずにすんだだけでも格段の進歩だ(詳細はジブリのH.P.参照)。そして今朝、疲れが残りつつも、ちょっと誇らしげに無事完走したことを安西さんに報告すると「終わったんだから、今日からまじめに仕事しなさいね」とするどく釘をさされたそうだ。「完走したのは練習と節制の賜物」と自己分析しているが、ムゼオに勤めて我慢強くなったことも大きいかも。


10月11日(水)
このところムゼオでは担当者ごとに打ち合わせが頻繁に行われ、4つある打合せ用テーブルが満杯になることもしばしば。今日も朝から来客がひっきりなしで、テーブルが空くことがほとんどない。ところで、武蔵境に引っ越してきてからお客様へのお茶出しはほとんどカフェ担当の宍戸さんが行っている。カフェでの訓練と称して、他のスタッフがやろうとしても誰よりも早く食器棚に到着し、手際よくお茶出し。その間わずか10秒前後。それでも満足できないのか、最近では食器棚の前の小さなテーブルに陣取って仕事している。その机は事務所で唯一タバコが吸える場所で、スモーカーが集まってはたわいない話がされ、いまや「カフェ・シッシー(宍戸さんのあだ名)」と呼ばれている。


10月12日(木)
深夜12時を過ぎてから、吾朗さん他数人のスタッフの携帯が鳴り出すという怪事件が起こった。電話をかけまくったのは北島さん。事務所を閉めて帰ろうとしたらカギが見当たらず、家に帰れなかったらしい。電話の末、犯人は宍戸さんと判明。朝カギを開けて、うっかり家のカギと同じようにかばんにいれてしまい、そのまま家に帰ってしまったとのこと。宍戸さんが自宅から車を飛ばして会社へ駆けつけ一件落着。北島さんはご立腹かと思いきや、今週入荷したテレビを前にリラックスムードで「おお、ご苦労!」と言ったとか。事件後、宍戸さんは「もう2度としない」と宣言していたが、その横で橋田さんは「人ごととは思えない」とつぶやいていた。


2000.1013(金)
季節の変わり目のためか、最近ムゼオでは風邪が流行っている。鼻をぐすぐすしている人や目がしょぼしょぼしている人が多い。普段はタフな小葉松さんが、昨日は風邪気味のためか夕日に向かってしばしまどろんでいたし、今日はこれまたタフな盛田さんが、体調悪いといって夕方早退。普段とおり昼飯を食べ、その直後にドーナツをバクバク食べていたのにどうしたことか。珍しいことに一番虚弱体質の橋田さんがまだ風邪をひいていない。本人は節制の努力が実を結んだと思っているらしいが、単に事務所の隣が医者であるという安心感が効いているだけかもしれない。


10月16日(月)
徳間社長のお別れの会が高輪プリンスホテルにて行われる。ムゼオのスタッフ数名は、葬儀への参列組と式の準備組に分かれて会場に朝から直行。サラリーマンを辞めて「すっかり私服が板に付いてきたね」とジブリの鈴木さんに変な誉められ方をされている盛田さんは、スーツをすべて捨ててしまったという理由でお留守番。静かな事務所で業務を粛々とこなしたそうだ。


10月17日(火)
宮崎監督からのお誘いで、3スタの安西さんと石光さん、三好さんが近くの洋食屋さんに夕飯に出かける。女性2人はすでに夕食を済ましていて、安西さんは軽食を注文。しかしダイエット中であるはずの石光さんは「今日は特別」と豚丼を頼み、周囲の非難をよそに満腹状態。彼女にとって特別じゃない日は年に何日あるのだろうか。


10月18日(水)
渡辺さん、盛田さん、橋田さんの3人が三鷹市に打ち合せに出かける。3人ともなにやら真剣な表情だ。早急に解決しなくてはならない問題があるのだろうか。打ち合わせは4時間近くにもおよび、事務所に3人が戻ったときにはすでに外は暗くなっていた。盛田さんはまだ興奮覚めやらぬ様子だ。しかし会議の内容を橋田さんに尋ねると「窓から見える夕日が真っ赤で奇麗だった」と脳天気な返事が返ってきた。


10月19日(木)
カフェ担当の宍戸さんが、今週は毎日、ムゼオのスタッフを数名誘って吉祥寺にランチに出かけている。吉祥寺界隈にある人気のカフェレストランのメニューや味、サービスの視察が目的だ。当然誘われたみんなは喜んで出かけていくのだが、おいしいことばかりではない。いろんな種類のメニューを賞味するため、自分の好きな料理を注文できないし、食べた感想を伝えるため、考えて食べなくてはならない。物価は武蔵境より高く、おまけに自腹だ。ちょっと変わった息抜きにはなっているのだが。


10月20日(金)
ムゼオではここのところ、吾朗さんを交えての長時間の打ち合わせが頻繁に行なわれている。話が煮詰まってくると吾朗さんは決まって絵を書き出す。特にスタッフの似顔絵が得意で、盛田さんや橋田さん、宍戸さんの絵は似ていると評判。今日もレジのオペレーションの打合わせをしていたところ、吾朗さんお気に入りの電子白板にいつのまにか、カフェのレジに立っている宍戸さんが何パターンも描かれ、みんなで爆笑。「いやー、やっぱり(宮崎監督の)DNAがしっかり埋め込まれているんだなあ」と盛田さんは感心しきりだった。


10月21日(土)
吾朗さんがジブリの鈴木さんに昼食に誘われたので、今朝吾朗さんが作ったお弁当を橋田さんが貰うことになる。小葉松さんや渡辺さんらは中身に興味津々。包みを開けると出てきたのはサンドイッチ。入り卵とコンビーフ(しかもきちんと味付けしてある)にママレードとジャムを半分づつつけたものの3種類だ。「まめだねー」「うまい」などと言うが早いかみんなの手が伸び、瞬く間にサンドイッチはなくなった。結局3時ごろ、橋田さんは空腹に耐えかねて昼食をとり直していた。


10月23日(月)
ムゼオの男性4人組(渡辺・盛田・橋田・西方)は鈴木プロデューサーとの打ち合わせのためジブリへ。軟弱な橋田さんが雨の中を15分以上も歩くのをいやがり、車で行くことを主張するが、あいにく車は北島さんが使用するため、結局歩くことになる。事務所からジブリまでの道は近くて遠い中途半端な距離。大の大人が4人揃って傘をさして歩く様は、どこか哀愁が漂っていた。


10月24日(火)
建築現場ではコンクリートの打ち込みが急ピッチで進んでいるが、作業状況は若干遅れ気味とのこと。コンクリートを打ち込む時に限って雨が降るのも原因の一つだ。関係者に雨男や雨女がいるからだと、現場では皆口々に言っているそうだ。しかしだれも自分だとは思っていないらしい。


10月25日(水)
先月引越しを終えたばかりのムゼオの事務所に早くも引越し話が持ち上がる。といってもまた事務所を代えるのではなく、ジブリの3スタにある三好さんと石光さんの机と機器類を武蔵境の事務所に移すのだ。前ほどの規模ではないが、3スタからの機器類10数台の搬出・搬入から、今後増える新スタッフのことも考慮したレイアウト変更、電気・電話増設工事までかなりの作業量。しかも引越日は来週木曜日と急な話だ。吾朗さんは忙しい中夜なべして事務所のレイアウトを作成し、西方さんは電気関係、橋田さんは運搬関係の作業に追われる。3スタも準備作業でおおわらわ。この「引越しショック」は早く終わってほしい。


10月26日(木)
明日から開催される神保町古本市に行くため、安西さんは店のチェックや下調べに余念がない。大量の本の中から展示や資料に有効な古本を探し出すのは結構大変そう。古本屋巡りが趣味の安西さんはいいとして、体力のない三好さんは根気強く目的の本を探し出せるのだろうか。


10月27日(金)
北島さんにイタリア出張の計画があるらしい。吾朗さんに旅費の見積りを指示された西方さんは、早速ネットで運賃調べ。世界各地をいかに安く旅するかにかけて人後に落ちない彼は、アリタリア航空やJAL直行便を使った運賃を即座にはじき出す。さらに「大韓航空も後で調べますが、欧州の乗り換え便を使えばもっと安くなるし、往復宿泊費も安いところ泊まれば15万以下で済むかも。それで十分でしょう」とぬかりない。北島さんは「うれしい。そこまで深く考えてくれて」と言うのが精一杯だった。

宮崎監督がはじめて新事務所に来社。事務所についての感想を一通り述べた後、すぐにUターン。その間わずか15分。嵐のような出来事とはこのこのとか。


10月30日(月)
朝から打ち合わせのため安西さんが来れず、M・M.を遅らせる。M・Mでは引越しのほか、新しく入る人のことなどが話される。

立体ゾートロープの制作チームが人形の原型第2弾をもって来る。その出来栄えに宮崎監督も上機嫌。しかし、8種のキャラクターを十数体づつ作らなくてはならないことを考えると道は遠い。


10月31日(火)
展示物や資料類の保管用に新しく倉庫を借りることになる。早速明日搬入するため三好さんと橋田さんは大量の荷物を梱包しつつ、忘れないようにデジカメで撮影する。これ本当にトラックに全部乗るのか?