2001年11月
11月02日(金)
午前中に外出した田坂さんが、みかんを10キロほど買い込んできた。事務所のみんなに配り、アルバイトさんの差し入れにと休憩室にも置いていたところ、夕方6時過ぎにみかんが全て無くなってることを黒瀬さんが発見。しかし驚いたのは田坂さんだけで、その場に居合わせたスタッフには、食べ物消費の異常な速さは既に常識だったらしい。
11月04日(日)
カフェの洗い場のヘルプに、事務所の何人かが駆り出される。「麦わらぼうし」のエプロンを初めてつけるスタッフは、どこか照れ臭そう。そんな中、長身の佐々木さんがユニフォームを身につけ厨房に登場すると、「カッコイイ」と溜息が漏れていた。
11月05日(月)
朝9時から夜の7時までびっしりと、運営の説明会や財団関係の打ち合わせが入っている西方事務局長は、分刻みで自分のスケジュールを書き出していた。しかし、その後福井さんが、スケジュール表を破り捨てている西方さんの姿を見たそうだ。
11月06日(火)
TV番組収録のため、○フィーや○AXらが来館。撮影クルーも40人に及び、さらに美術館の広報チーム3人のほか、宣伝代理店のメイジャーさんからは土屋さん、香川さん、ジブリからは西岡さんが立会いに来て大掛かりな撮影となった。
11月07日(水)
美術館のお問い合わせ専用ダイアル0570-055777が、今日から開設する。美術館事務所で鳴る電話の音も少なくなり、雰囲気が少し変わった。電話対応に追われることがなくなったのをいいことに、好奇心旺盛なスタッフは新しい番号に電話をかけて、いろいろと聞いていた。
11月08日(木)
ノルシュテイン氏をモデルにしたポスターを明日から販売するため、閉館後に深谷さん、大口さん、机さんが地下1階でポスター巻きをする。談笑しながらポスターを巻いている3人の横で、吾朗さんはガラスケースにポストカードセットなどを慎重に並べ、黙々とディスプレイ方法を考えていた。その後大口さんを呼び、ミリ単位の細かいずれを気にしながら、カードの配列を指示。現在ガラスケースにはポストカードセット、館内パンフレット、オリジナル短編映画「くじらとり」のパンフレットが並んでいる。
11月09日(金)
吾朗館長に代わって、今日初めて閉館の鐘を鳴らす大役を果たすことになった深谷さんが、落ち着かない様子で事務所にやってくる。歩き回りながら「吾朗さんはいつもこの時間、何してるの?」と周りに話しかけていた。ちなみに吾朗さんはいつも、正確に時を刻む時計を見ながら閉館の時間を待って鐘を鳴らしているのだが、「深谷さんの時計は狂ってそうだよね」と田坂さんが残酷な発言をしていた。
11月10日(土)
このところの雨続きのせいで、地下1階サンクンテラスに置かれている風呂釜「萬年亀甲浴」の水が溢れてしまった。滝口さんと大口さんがせっせとひしゃくで水をすくい、デッキブラシで清掃する。そんな二人を、深谷さんが1階入口から見下ろし、不敵な笑みを浮かべていたらしい。
11月12日(月)
ショップがユニフォームの衣替え。夏服は青のギンガムチェックのシャツだったのが、青のタータンチェックのネルシャツに変わった。動きやすくて働き者、というのがショップのユニフォームのポイントだが、塩島店長は「冬服のほうがフィオ(紅の豚)のイメージに近いよね」とご満悦だった。
11月13日(火)
休館日を利用して、朝7時半から図録の写真撮影に立会いつつ、展示のメンテナンスに立会うという、ハードスケジュールの安西さん。夜は早めに帰れるだろうと思っていたら、地下一階のイントロボックスの修理がえらく時間がかかり、なんと終電を逃してしまったそうだ。
11月14日(水)
美術館の入場券は、本物の35ミリ映画用フィルムを紙ではさんで作られている。
しかしそのフィルムが、映画の中のどのシーンなのかは受け取るまで分からない。
しかも、お気に入りのキャラがアップでこちらを向いてるといったシーンが「当たる」のはまれなこと。そんなこともあって、入場券を渡すケーキハウス担当の染谷さんは、「こんなの初めて」とトトロがアップで写ったフィルムを発見して感激していた。
11月15日(木)
閉館後、北嶋さんが、業者さんとロボット兵のライトアップのテストを行う。
ライトアップしようという企画が出たからだ。通常夜の11時で電灯が消されて真っ暗になるロボット兵が、今日は赤や緑や黄に照らされていた。スタッフはその新鮮な姿を楽しんだが、ライトが青に変わると「ちょっと恐いね」と言う人も。
11月17日(土)
まだ美術館の映画を見たことがないスタッフのために、土星座で「くじらとり」と「コロの大さんぽ」の試写会が行なわれる。1月から上映予定の「コロの大さんぽ」は、宮崎館主が原作・監督・絵コンテのいわば「最新作」となる。はじめて見るスタッフは、仔犬コロのかわいらしさにくらくらしてしまったらしい。パンフレットに寄稿してくださる予定の覚和歌子さんも、「かわいかった」とニコニコ顔。
11月19日(月)
三鷹警察署の遺失物係の方と、美術館で打ち合わせが行なわれる。最近、椅子に座るときにはいつも正座していて、なんとなく元気のないように見えた橋田さんも、この日はホワイトボードにいろいろと問題点を書き出して、現場責任者の威厳を見せていた。
11月20日(火)
「千と千尋の神隠し」海外公開のプロモーションの一環として、香港・台湾・シンガポールからのお客様が美術館に来る。吾朗さんがなんと英語で挨拶をし、居合わせた関係者も「すごいね」と言っていたが、どうやら海外から来たお客様の半分は、日本語を喋ることができたらしい。
11月21日(水)
スタッフは、担当のポジションによってそれぞれ違うユニフォームを着ている。
この日の閉館後、広報関係の撮影のため、全種類のユニフォームがそろうようにスタッフが集まった。撮影となるとそわそわする深谷さんには、机さんが前もって声をかけていたのだが、やはりいざ撮るときはちょっと緊張していたようで、はにかんで笑っていた。
11月22日(木)
地下1階常設展示室の「ジブリハウス」にある三つの開かない窓の内、一つの窓が開けられるようになり、部屋の中にジブリのメインスタッフルームをモデルにしたドールハウスが取り付けられた。作画机に散乱する小物までしっかりと再現した部屋に、宮崎館主をはじめスタッフの人形も置かれたのだが、これが怖いくらいにリアル。特に館主は髪の色や肩の線、お尻の感じやかかとの上げかたなどがそっくりで、立ち会った大口さんと三好さんは、造形師さんの仕事の細かさに感動していた。
11月23日(金)
カフェに新しいアルバイトさんが何人か入る。ホールを任されている松下さんは、新人にコーヒーや紅茶の入れ方から教える指導教官。小柄な鈴木君にいろいろ教えたこの日の夜、松下さんは、ぽつりと「目がキレイな子だ」と言っていた。
11月25日(日)
西方さんが、仕事の資料をまとめたものを佐々木さんに「これ欲しいですか?」と聞くと、「ええ、是非」と佐々木さんが答え、「じゃあ、あげません」と西方さん。オープン当初からの尋常でない忙しさが一向に改善されない総務では、なかなかスリリングで楽しい会話が飛び交っている。
11月26日(月)
休館日が火曜日のため、月曜日になるといろんな飲み会が行なわれる。この日はカフェの田代さん主催の飲み会、染谷さんや小林さんらスタッフのリーダーさん飲み会、運営のコンサルをしてくれていたドレナヴァンさんの飲み会、そして田村さん、田坂さん、塩島さんの女三人カレー屋飲み会、とあちこちで息抜きが行なわれた。
11月27日(火)
美術館収蔵作品についたカビや虫を退治する燻蒸作業を行うことになる。今日は作品を保管している調布の倉庫から、燻蒸を行う場所へ運ぶための箱詰め作業。
大小あわせて60箱以上にもなった。
2001年11月28日 (水)
スタジオジブリとジブリ美術館合同の忘年会のため、美術館側からは吾朗さん、盛田さん、田村さん、机さんが打合せに出席した。急遽幹事メンバーに選ばれた深谷さんは「自分は向いていない」と戸惑い気味。しかしそのあと「本日はお忙しい中…」と司会の練習をしている深谷さんの姿が目撃され、事務所に報告された。
11月29日(木)
ショップの新しいレイアウトがお披露目。Tシャツをレジ前の棚に持ってきて並べなおし、見やすいようにした。また、窓側に箱ものをまとめて移動させ、プラモデルやパズルなどを置いた。前日閉館後に作業したスタッフの苦労がしのばれる。
11月30日(金)
朝、橋田さんが開館の鐘を鳴らす。と、そのとき大事件がっ! 鐘の中についている玉が外れて2階から地上へと転がり落ちたのだ。見ていたお客さまとスタッフは呆然。「玉をさがして!」と橋田さんの無線の呼びかけもむなしく、結局見つからなかった。その後新しい玉をつけ直したので、閉館の鐘では事なきを得たが、「どうしてこうなっちゃうんだろう」と橋田さんはしょんぼり。