2001年05月


05月01日(火)
「吾朗君が赤い目をして帰ってくると、疲れているんだなーと思って、物事を頼みづらくなっちゃうんだよー」とは、川口さんのやさしい言葉。対して吾朗さんは「赤目はドライアイです」ときっぱり。今後は容赦なく頼みごとがふりかかるだろう。

連休の谷間を狙ったかのように3スタでは業者さんとの打ち合わせが目白押し。
ネコバスの目や歯や鼻の色や材質の候補を絞り、一階常設展示室の家具や小物の買出しスケジュールなどが決まる。


05月02日(水)
休暇をとっている人や外出している人が多く、今日のスイングビルは閑散としていた。おまけに外はどんより曇り空。スイングに残されたメンバーは、なんだかさみしくなってしまい、お昼にカップラーメンをすすり、さらにさみしい風景を演出していた。

図録の編集会議が行われる。編集スタッフのアイデァをもとに大まかな構成、ポイントが固まっていった。ここでも時間との戦いが問題となっていて、建物や展示物が出来たそばから写真に撮っていくのだが、それでも締め切りギリギリのものがけっこう出るらしい。


05月07日(月)
展示用画像データの色調整にアルバイトの方が増えた。時間がかかる作業のため、戦力増強で一気にはずみをつけたいところ。ちなみに色調整のアルバイトさんは、そろって実年齢に比べて見た目が若い。いつも実年齢より老けて見られてしまう田村さんは、「若さの秘訣を教えてほしい…」とつぶやいていた。


05月08日(火)
竣工まであと2ヵ月をきった建築現場では、定例会議会議にもいっそう熱が入っている。月に1回開催している総合定例会議の日程を確認した後、どこからともなく「次回で本当に最後だね…」との言葉がもれる。会議に参加していた全員が苦笑い。

雨の中、エツコさんが建築現場を訪問。カフェで、絵を飾ることができる壁の数を数えていた。展示室から外に通じるブリッジを渡った先のカフェの屋上に、はじめて上ったエツコさんは、そのスペースが意外と広いことに気づき、「いいこと考えた」といわんばかりにニコニコしていた。


05月09日(水)
美術館のショップ「マンマユート」の内装の仕様がほぼ決定した。オークの木、金属にリベット止め、手延べ風ガラスを組み合わせて、商品を並べる棚を作り込む。完成すると、昔の理科実験室のような雰囲気を醸し出しそうだ。また、入口の看板の裏側には、戦闘機を思い起こすようなプロペラ換気扇、という具合にちょっとした仕掛けもある。たくさんの商品が詰め込まれた時を想像すると、楽しくなる。


05月10日(木)
美術館のスタッフとして働いてもらうアルバイト採用についての会議が行われた。
時給や交通費、ローテンションなど、細かい点まで話し合われた。
アルバイトの方々が美術館の主旨を十分理解して、気持ちよく働けるようにしたいため、話し合いに相当熱が入り、飲まず食わずのまま夜遅くになってしまった。そんな時、抜群に気の利く橋田さんが、おにぎりや海苔巻、お茶を差し入れ。
いつもお弁当なので、コンビニのおにぎりを食べたことのない盛田さんも、うれしそうにおにぎりを手にとっていたが、ビニールの剥き方がわからず、ダイナミックに引きちぎっていた。一同大爆笑。


05月11日(金)
建物入口である通称「ケーキハウス」の上に、「三鷹の森ジブリ美術館」の文字がいよいよ取り付けられることになり、位置確認が行われた。職人さんが「三鷹の森ジブリ美術館」と印刷された紙を取り付け位置に貼り付け、「もう少し下!」などと吾朗さんが修正の指示を出す。その指示で職人さんが位置をずらして、吾朗さんが確認する、という作業が何回か繰り返された。しかしなかなか思うところに定まらず、最後には北嶋さんが「私も上がる!」と慣れた足取りで足場を駆け上がり、職人さんと一緒に調整し始めた。北嶋さんの加勢で、取り付け位置も無事決定。この作業風景をカメラに収めていた田村さんは、北嶋さんの勇ましい姿を見て惚れ込んでいた。


05月14日(月)
「千と千尋の神隠し」で大忙しのはずの宮崎監督が、早朝に建築現場に出現。
突然の訪問に驚く現場スタッフをもろともせず、宮崎監督は左官仕上げの外壁を見て、大変満足そうな表情で「常識じゃない感じがいい」と漏らしていた。


05月15日(火)
二馬力でのカフェミーティングで、ケーキ、プリンなどの試食と、コーヒーの試飲が行われた。
コーヒー好きの宮崎監督が、3スタにいたコーヒー好きスタッフを8人ほど集め、カフェのスタッフも加わり6種類のコーヒー豆を順番に試していった。しかし、4つ目くらいからどの味がいい味なのか、誰もわからなくなってきてしまったのこと。最後には「僕が入れます」と監督自らコーヒーを入れ、これが驚くほどおいしかったそうだ。

ちょうどその最中、常設展示室に置く翼長2mのプテラノドン模型が二馬力に届けられた。「悪の使者のように」とか「目はセキセイインコみたいに何考えてるかわからない目で」といった宮崎監督のややこしい指示に応えて作り上げられた「怪鳥」は、リアルで不気味で迫力がある。早速渡り廊下からぶら下げられていた。


05月16日(水)
今日のスイングビルは来客が多く、もともとあまり広くない打ち合わせスペースは満杯状態。打ち合わせ机の足りないことに気づいた佐々木さんと田坂さんは、いつもみんながお弁当やおやつを食べたりする「憩いの丸テーブル」を出動させた。しかし、2人用の小テーブルで5人が打ち合わせをする羽目になるとは、2人も想像だにしなかっただろう。

地下展示室の「最後の大物」といわれている縦型ゾートロープの打ち合わせが行われる。たくさんの羽ばたく鳥をどうやって筒状のアクリル版に描くのか、など問題点が噴出していた。果たして間に合うのか?


05月17日(木)
ハンディキャップを持つ方が、トイレをどのように使うのか、どのように感じるのかを理解し、美術館のトイレに生かすため、運営チームの深谷さん、大口さん、滝口さんが、トイレのテクニカルセンターにレクチャーを受けに行く。ビデオや講義で、今まで全く知らなかったことや知っていたけど見逃していたことを確認し、大変勉強になったとのこと。「自分がその人だったら、ということを考えると一番よくわかります」と諭され、みんな深くうなずいていたそうだ。


05月18日(金)
美術館に取り付ける電話の位置確認のため、田坂さんが久しぶりに建築現場に行く。写真で見ると「お菓子みたいでおいしそう」な外観は、実際に見たらやっぱり「おいしそうだった」とのこと。さらに、佐々木さんおすすめの男子トイレのかえるタイルを見て興奮し、女子トイレのみつばちタイルにも興奮し、とどめにトイレの個室ごとに壁紙が違うのにもときめいていた。また、左官の土壁の手触りが意外にちくちくせず、やさしい感じなのに驚いたそうだ。もうひとつ、館長の部屋や机がどこにもないことにも気づいたそうだが…。


05月19日(土)
最近風邪を引いてしまい、せきが止まらない西方さんは、同じく絶不調でだましだまし使用していたノートパソコンをとうとう新調した。さっそく美術館のロゴシールを貼り付け「めちゃめちゃ調子いいっすよー」とにこにこ顔だった。ちなみにムゼオのスタッフは、このシールを自分の手帳やパソコン、車などにぺたぺたと貼っている。


05月21日(月)
ショップで販売するネクタイのパターンがほぼ決まった。ムゼオ毛虫、「三鷹」の鷹、「井の頭」の猪、美術館ロゴの4パターン。「わたしの好きなものばっかり!」と田坂さんが黄色い歓声を上げていた。

ネコバスの足の実寸大サンプルが3スタに届く。一本だけで四人がけテーブルほぼいっぱいになる巨大な足の周りを皆で囲み、手で触ったり押したりしてその感触を味わっていた。


05月22日(火)
建築現場ではホールの足場が外され、地下一階から地上二階のドーム型天井まで見上げることができるようになった。ガラス張りドームの、くじらのステンドグラスも見られる。このチャンスを狙って、図録の編集スタッフが、どのように写真を撮るかを検討しに来ていた。一方、キャンペーン用の取材に建築現場を訪れたビデオ・ディレクターの桜井さんは、鬼のようにカメラのシャッターを切り「撮りたいものだらけでフィルム使ってしまいました」と一言。嬉しい限りだ。

夜のコンセプト会議が7時から始まり、終わったのは11時。またもみんなヘロヘロなのだが、美術館運営についてのお互いの共通認識をここで固めておかなければ。

ネコバスの足の実寸大サンプルが3スタに届く。一本だけで四人がけテーブルほぼいっぱいになる巨大な足の周りを皆で囲み、手で触ったり押したりしてその感触を味わっていた。


05月23日(水)
ショップの内装をお願いする工場の検査のため、吾朗さんが朝から長岡へ行く。
そこで見た商品棚のあまりの巨大さにびっくり。ショップ担当の宍戸さん、塩島さんはムゼオでも一、二を争うミニサイズなので、商品の陳列・整理にはさぞかし苦労するだろうと思ったそうだ。


05月24日(木)
3スタにて一階常設展示室の家具について打ち合わせ。デザインや木材の最終決定などもさることながら、スケジュールのすり合わせに神経がすり減らされる時期がきている。図録の写真撮影をできるだけ早くしたいということもあり、遅れは許されない状況になってきた。もっともこれは展示全体に言えることなのだが…。

カフェ担当・堀口さんの知り合いの農家から無農薬のきゅうりが送られてきた。
甘くみずみずしいきゅうりが疲れを癒すのか、スイングではみんなきゅうりを手にして仕事に向かっていた。


05月25日(金)
10種類以上のオリジナル食器を製作・販売する予定で準備を進めているカフェ班が、焼き上がったキャセロールのチェックを二馬力で行った。蓋の曲線が温かさのある仕上がりに、宮崎監督をはじめスタッフ一同が大満足。

立体ゾートロープの回転盤に完成した人形が取り付けられ、いよいよ照明を当てて実験してみることになり、安西さんは町田にある工房へ。回転の勢いで人形が吹っ飛んだらどうしようなどと怖いことを心配していたが杞憂に終わり、ストロボ照明との同調もうまくいって、無事人形が動いて見えた。一つの山を越えた感じだ。


05月26日(土)
3スタにて地下一階展示室のパーテーション工事や搬入について打ち合わせが行われる。大型でしかも高速で動く仕掛けのものが多い部屋だけに、決めないといけないことが山積みだ。吾朗さん、北嶋さん、安西さんと業者さんとの間にシリアスな空気が漂っていた。

続いて図録の打ち合わせ。ここでもシビアなスケジュールに待ったなしの状況。
写真撮影の日程が練られ、安西さんと三好さんはその日までに展示を何としても仕上げるようにと、ジブリ出版部の田居さんと編集の中島さんから追い詰められていた。


05月28日(月)
ショップの塩島さんが、アルバイト募集に関して某誌の取材を受ける。ムゼオに来る前の職場で何度も取材を受けたことがある塩島さんは「面白かった」と余裕の笑み。取材に同席した宍戸さんも安心しておまかせ状態だった。

宮崎監督が原画を描かないと進まない展示物が、いよいよ待ったなしの状態になっている。そこで「時間があるときは3スタで絵を描く」と監督が宣言し、バイトさん用の机があわただしく監督用に片付けられた。早速午前中に現れた監督は、「千と千尋」のオケ録りに出かけるギリギリまで絵を描いていた。映画完成までこうした行き来が続くのだろう。