ギャラリー展示男鹿和雄『秋田、遊びの風景』展
2009年9月30日(水)から
男鹿和雄氏は、「となりのトトロ」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」「もののけ姫」で美術監督をつとめるなど、アニメーションの舞台となる背景画を数多く描き続けてきました。山や川、空や雲、草木や田園風景など、自然の色彩豊かな表情を描いた男鹿和雄氏の背景美術の世界は、私たちが誰しも親しみ、どこか懐かしく感じる風景ばかりです。
そんな男鹿和雄氏が子ども時代を過ごした秋田での自然との触れあいの原体験が、画文集『秋田、遊びの風景』(徳間書店刊)にまとめられました。描かれているのは、1960年代の秋田の美しい自然、雪深い町の風景と、その中で創意工夫して遊ぶ子どもたちの逞しい姿ですが、それだけの単純な構図では言い尽くせないものを感じます。
子どもたちがいつも山や川に集って、子どもなりに工夫して遊ぶ姿の描写からは、魚を捕るにしても、木の実を採るにしても、いかに上手くやるか、自分でいろいろ試し、考えながら、身につけていったであろう様子が見て取れます。遊びは、体を使ってやるものであり、年長者や友だちの真似をし、互いに競い合いながら、自分の体で覚えるものだったのです。
しかも、子どもながらに大人ともある距離感をもって交わりながら遊んでいたことも興味深く描かれています。山で採ってきたタケノコを家へ持って帰り味噌汁にしてもらったり、川で取ったどじょうを売ってアイスキャンディを買ったり、鍛冶屋でヤスを作ってもらったり。美しい自然だけでなく、親や近所の大人たちに囲まれて遊んでいた幸せな時代だったといえるでしょう。
また、食べ物が少なかった時代だけに、遊びは常に食べ物と結びついていました。カジカ、赤スモモ、クリ、キノコ、取れるものは何でも。そして母親が作ってくれた、きゅうりもみ、さわし柿、干し餅。さらに、運動会も、遠足も、楽しみは食べること。食の記憶こそ、遊びの風景でもあるのです。
今回の展示では、『秋田、遊びの風景』掲載の男鹿和雄氏が描いた挿絵を展示するとともに、描かれた時代、内容の理解を助けるために、実際の遊び道具や自然の風物、そして当時の写真などを集めて展示します。1960年代の秋田の子どもたちの遊びと食の風景を感じ取ってもらい、子ども本来の躍動的な姿に想いを馳せてもらえたら幸いです。
会期: 2009年9月30日(水)~ 2010年2月1日(月)
会場: 三鷹の森ジブリ美術館 2階ギャラリー