三鷹の森ジブリ美術館企画展示『挿絵が僕らにくれたもの』展 —通俗文化の源流—
2012年6月2日(土)から
6月2日から新しい企画展示がはじまりました。
100年以上も前、イギリスの民俗学者アンドルー・ラングは、世界各国の伝承文学や民話などを集めた童話集を刊行しました。日本でも翻訳本が出版され、現在も読み継がれています。その本の挿絵には、お姫様や王子様、竜に巨人に怪物、魔女や妖精、魔法使いまで、現代の私たちの誰もが知っている登場人物の原形が描かれていました。
今回の展示では、その挿絵を大きく拡大し、挿絵画家の類まれなる想像力と、博識と、そして圧倒的な画力を堪能いただけます。
あわせて、同じ19世紀後半のロシアの画家イワン・ビリービンのロシア昔話童話集の挿絵も紹介します。その画法は現在のアニメーション作りにつながっていきます。
挿絵が世に出た19世紀末から20世紀の初頭は、日本は近代化に向け、西欧を受け入れ消化していた時期です。
その頃イギリスに留学し近代化を初めて目の当たりにした"夏目漱石"を語り部に、西欧や日本の絵画、絵物語本などをもちいて、自分たちが通俗文化の継承者の末裔であることを解説します。
スタジオジブリの映画作りには、先人たちから受け継がれたものが脈々と流れていると宮崎駿監督は語ります。リレーのバトンのように、受けて、渡して、が繰り返され、今、その先端に我々はいるのです。
物語の世界を絵で表現しようとした時、すべてに興味を持ち、自分の目で見て、自分の手で描き、世界を自分に引き寄せる。言葉では簡単ですが、実際に行おうとするととても大変で困難なことです。
先人の奮闘努力の先にある"人の心を捉える筆の力"にじっくりふれていただけたらと思います。