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当時のTVアニメが映し出していたもの。
野球やテニスなどのスポーツ根性ものアニメーションが全盛期を迎え、必ず自らを自虐的なまでに痛めつけ、高きを目指す主人公の姿がお茶の間の人気をさらっていた。そして、その姿を見つめていたのは、子供たちだけではなかった。高度経済成長の中で歯を食いしばり、会社のためにと身を粉にして働いていた大人たちも、自らの姿を重ね合わせ、手に汗を握りながら見ていたのだ。
そんな時代に、「ルパン三世」はある種のアンチテーゼとして生まれた。莫大な財産を持ち、倦怠感をまぎらわすために盗みを働くルパン。しかし、そのルパン像に疑問を抱いていた高畑・宮崎は、演出交代に伴い路線変更を敢行。すでに絵コンテや脚本の作業が進んでいた回もあった中、祖父の財産は先代が使い果たし、一文無しであるという解釈を打ち立て、お金がなくても快活で陽気、活力にあふれ信頼できる仲間とライバルに囲まれた「ルパン三世」という像を作り上げた。