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2006年4月13日関連情報アップ!プレヴェールは愛の詩人だった。
関連情報ページをアップしました!
このページでは、今後も、「王と鳥」に関連した色々な情報をお伝えしていくつもりです。
今回、アップしたのは、「王と鳥」の脚本家ジャック・プレヴェールに関連する書籍とCDの情報。
◆書籍『ことばたち』
◆シャンソンCD『私は私 このまんまなの ~プレヴェールのうた』
以下、発売当時のジブリ出版部の編集後記より。
■2004.10.13 ジャック・プレヴェールの「ことばたち」
高畑勲監督は、フランスの長編アニメーション映画「やぶにらみの暴君」(1953年公開1979年「王と鳥」に改作)(ポール・グリモー監督作品)に大きな影響を受けたそうです。「アニメーションでもこんなすごいことができるのか」とびっくりし、この世界にはいる、きっかけにもなった作品だとも聞いています。この映画の脚本を書いたのが、ジャック・プレヴェール。「ことばたち」という詩集の著者です。
フランスで1946年に出版されてから300万部というベストセラーになった詩集「ことばたち」ですが、なぜか日本では、その翻訳が出ませんでした。日本の人々にも絶対に読まれるべき詩集だと、高畑勲監督はライフワークのように翻訳し、今回日本ではじめて、その完訳本が出版されました(発行・発売 ぴあ)。監督の詳細な解説・注釈本もつき、2冊がケースにはいっています。ちなみに装丁は、高畑監督が愛読していた原書の「ことばたち」の読み込まれたカバーそのままを装丁として使いました。本を手にとっていただくと、いかに高畑監督が、何度もこの詩集を読み返したかが、わかろうというものです。
さて、プレヴェールはどんな詩を書いた人なのでしょう?
日本ではシャンソンの「枯葉」が、彼の詩ではもっとも知られているかもしれません。けれど「枯葉」に象徴される愛の詩だけではなく、あらゆる戦争や破壊、抑圧に反対した反権利力の詩、子供や女性など弱い存在を心から尊重している詩、そして、ユーモアにあふれた詩もたくさん書いています。ちなみに高畑監督は、「プレヴェールのユーモアは、平凡な日常に自由の風を吹き込んで、わたしたちを生きやすくしてくれる」と、書いています。戦争とテロが蔓延するこの時代、彼の詩を読むと少し心が元気になるはずです
■2004.10.23 「私は私 このまんまなの プレヴェールのうた」について
ジャック・プレヴェール「ことばたち」の完訳という仕事を終えたばかりの高畑監督が、もうひとつプレヴェールがらみの仕事を完成しました。それは、「私は私 このまんまなの プレヴェールのうた」というCD(ユニバーサル)の選曲・解説・対訳という仕事です。つまり、高畑さん推薦のプレヴェールの歌による、コンピレーション・アルバムを作りあげたということなのです。イブ・モンタン、ジュッリェット・グレコ、エデット・ピアフといったフランス・シャンソン界の大御所から、リオという若手まで13人の歌手が、26曲のプレヴェールの詩を歌っているアルバムなのですが、音楽に無茶苦茶詳しい、そして、大のプレヴェールファンの高畑監督ならではの仕事でした。
さて、このCDジャケットの絵を選ぶお手伝いをしました。ジャケットは、奈良美智さんの作品です。プレヴェールには、奈良さんの絵が絶対に合うという高畑監督の意見で、奈良さんに提案。彼もプレヴェールの詩を気に入って、このコラボレーションが実現しました。絵柄はナイフをもった奈良さんのあの少女が、赤い服と帽子を身にまとい、少し怒ったふうに上を見上げています。子供の世間に対する無垢なる反抗心といった風情が、そこにはあります。その有り様は、まさに「私は私 このまんまなの」というプレヴェールの詩のタイトルそのものです。「それで、いったい何が悪いの。まちがっているのは、大人の社会のほうじゃない」という台詞が続きそうな気配でもあります。
奈良さんの画集から、高畑さんが最終的にこの絵を選んだのは、こうした絵の印象が、プレヴェールの生きる姿勢と共通するからだと思います。何枚かの候補の絵を見ていて、私もやはりこの絵がいいと思いました。と同時に、プレヴェールにせよ、奈良さんにせよ、そして高畑さんにせよ、ものを作る人の中には、この社会への反抗精神がないと、作品はつくれないのではないかとも思ったのです。そういう意味では、この少女は、芸術の魂を象徴しているのかもしれません。にらんだ目が印象的なこのCDジャケット、店頭でぜひ見てみてください。
■2004.10.30 プレヴェール「ことばたち」への反響
もうひとつプレヴェールがらみの話題。プレヴェールはアニメーション映画「やぶにらみの暴君」(改題「王と鳥」)の脚本家でもあります。ポール・グリモー監督作品のこのフランスの長編アニメーションが、プレヴェール「ことばたち」(訳および解説と注解 高畑勲 発売 ぴあ)完訳記念として、去る10月27日、東京・飯田橋の日仏学院で上映されました。そのあと簡単な打ち上げがあったのですが、そこで発行・発売のぴあの矢内廣代表取締役からのご挨拶がありました。その中味は「ジブリの鈴木プロデューサーからうかがったところによれば、フランス文学の専門家から、この『ことばたち』の完訳は、日本のフランス文学史上、快挙であるという賛辞を先日、高畑さんは受けられたそうです。こうした意味のある本が、できたことはまことによかった」というものでした。
本に対する反応が、出版部のほうにも届き始めています。ある読者の方は、電話で、「注解が詳しい上に、非常に愛がある。愛のある注解なんてそうそうできるものではない。高畑さんは大変だったろうし、これだけの内容をあの値段で出すなんて、本当にみなさん素晴らしい。高畑勲さんにお疲れ様とありがとうを、ぜひ伝えて欲しい」と熱っぽく語られました。また、ご自分もパリについての著書がある、大学教授からも「大変感動し、快挙と存じます」というお手紙が届きました。
そうなのです。どうやら、これは、やっぱりすごい仕事を高畑監督はやりとげたということなのだと思います。本になるまで、校正を何度もやり直し、ついには、鈴木PDから「本は一応仕上がったけれど、増刷のときには、また、やりかえがあるのでは」(笑)と冗談を言われるほどのねばりのある仕事ぶりだった高畑監督も、こうした反応にやっと、「ほっとした」と漏らされています。編集担当者も、高畑監督以上に「ホッ!」です。