フレスコ画スカーフができるまで
手捺染38版を刷る!
1色目の版から順を追ってみていきます。
ここではわかりやすくするため、本来は最後に刷る黒の輪郭線がある状態から刷り始めます
絹を練る作業の秘密
絹練(=けんれん)とは、文字通り「絹を練る」ことですが、
生地の段階についている不純物(セリシン)を落とす加工を「練る」(=精錬)と呼ぶのです。
絹はまず、機織りが済んだ状態(=生機/きばた)で羽前絹練へ運ばれ、精錬されます。
蚕が糸を吐くとき、同時にセリシンという物質も吐いて糸を保護しているため、
機織りが済んだ段階では絹の柔らかさはなく、
たいへんゴワゴワした質感なのだそうです。
ですからまず、図柄を刷る前の工程として
生機を精錬してセリシンを落とす必要があるわけです。
精錬には、出羽三山に育まれた澄んだ水がたっぷりと使われます。
生機を竹竿に吊り、95℃のお湯を張った釜に入れて煮ます。
羽前絹練では昔ながらの〈石鹸練り〉が行なわれており、
このときに使うのは石鹸とアルカリ剤。
アルカリ剤はセリシンを溶かす効果がありますが、
それだけでは表面が荒れるため、石鹸によって穏やかに洗い落とすのだそう。
▲四角い釜がたくさん並んだ工場内。「ようは洗濯と同じで、精練が終わったら、どんどん綺麗なお湯ですすいでいくわけです」(工場長の冨樫さん)
また、練りムラができないよう、時々、人の手で布を揺らす必要があります。
芳村捺染もここ羽前絹練もほとんどの工程に女性の姿がありましたが、
この作業だけは男性が担っています。
▲「女性ではどうしても練りは無理ですね。約95℃のお湯を扱い、しかも冷房が効かない場所なので、その汗たるや大変なんです。皆、よくやってるなと思って感心しているんですよ」(阿部社長)
▲その後つややかな白いシルクに仕上がる。その品質の高さから高級シルクとして輸出される。
「練る」ことで二割ほど軽くなった生機が芳村捺染に運ばれ、
フレスコ画の柄が染色されたあと、さらにもう一度、羽前絹練さんへと戻され、
顔料の糊を洗い落とすわけです。