本棚より[季刊トライホークス 2013年35号]
2013.12.02
世の中にはいろいろな本があります。古今東西、恋物語もあれば、冒険物語もあり、たくさんある本の中から、トライホークスに置かれているおすすめの本とお話を紹介します。トライホークスの本棚の中の一冊から、みなさんの本棚の一冊にしていただけたら嬉しいです。
富士山うたごよみ
二十四節気とは、一年を二十四にわけて、それぞれに季節の名称を与えたものです。詳しく知らない人でも、〝夏至〞や〝秋分〞は知っていると思います。本書では、〝立春〞から〝大寒〞までを、二十四種のユニークな富士山の絵と俵万智さんの歌で紹介しています。
例えば〝霜降〞。霜が降りて植物の色が変わる紅葉の季節の歌は『 さよならの形に ススキが手を振って 駆け抜けてゆく風の輪唱 』。俵さんの歌は、日本古来の調べである五七調で、日常生活を題材に、やさしい言葉で詠まれています。音読もしやすいので、敬遠してしまいがちな「歌を味わう」ことを、身近にしてくれます。
そしてこのページには、秋らしい色に彩られた富士山と、空に浮かぶ丸い月、そしてまるで手のような形をしたススキが描かれています。モダンなのに日本的で、ふと、秋になると切なさを感じるなぁ、と記憶の中にある古い情景を思い出しました。U.G. サトーさんによる富士山の絵は、どの季節も斬新です。あるときはビールになっていたり、風呂敷の姿になっていたりするので、ページの中に隠れている富士山を探す楽しみもあります。
1年に1度だけやってくる季節の節目。歌や絵と一緒に感じることで、自分の中にもしっかりと染み付いていることを再認識しました。目も心も奪われる絵本です。
小さなスプーンおばさん
ある朝、目を覚ましてみると、おばさんの体はティースプーンぐらいに小さくなっていました! 小さな体ではベッドから下りるのもひと苦労。掃除や洗濯、それに、どうやって料理をしたらいいのでしょう?
「なるほど。スプーンみたいに小さくなっちゃったんなら、それでうまくいくようにやらなきゃいけないわね。」仕事はどっさりあるけれど、おばさんは落ち着いたもの。実は、小さくなると動物たちの言葉を話すことができるようになるのです。山ほどあった仕事は、ねずみや猫や犬、雨に、風に、太陽に、そしてつぼやフライパンが片付けてくれました。もちろん、彼らが仕事をすべてきれいに終わらせたのは、おばさんがうまく話をしたからなのですが。
いつ小さくなるのか、いつ元の大きさに戻れるのか、さっぱりわからないおばさんですが、どんなときでも慌てず、騒がず、楽しみながら、てきぱきと困難をきりぬけていきます。たとえティースプーンぐらいの大きさでも、おばさんと一緒なら、楽しめること請け合いです。マカロニを買いにいったり、子守りをしたり、おばさんがどうやって森のカラスの女王さまになったかを知りたい人はぜひ、本を読んでみて下さいね。
スプーンおばさんのお話は、この本の他に『スプーンおばさんのぼうけん』『スプーンおばさんのゆかいな旅』があります。こちらもぜひお楽しみください。
季刊トライホークス 35号(内容紹介)
「季刊トライホークス」は、図書閲覧室トライホークスで 3ヶ月ごとに発行しているフリーペーパーです。ここでは、図書室の本を紹介するとともに、様々な分野で活躍している方に本の紹介をしていただき、図書室の枠をこえ「本」と出会うきっかけ作りをしていきたいと考えています。
- 夢中になって読んだ本
- 谷口由美子 さん。ご存知の方も多いと思います。今回は『ローラ物語1~5』(岩波少年文庫)をはじめ、たくさんの作品を訳されている谷口由美子さんに、忘れられない本である「ローラ」や「アン」との出会いを紹介していただきました。今回、改めてシリーズを読み直そうと近くの図書館で本を借りたのですが、ローラの物語はたくさんの人が手に取ったことが伺えて、とても嬉しくなりました。図書室でもぜひ手にとってもらいたいです。
- 連載「アーサー・ランサム(第3回)」
- 33号から4回にわたって、イギリスの作家アーサー・ランサムについて連載しています。35号で紹介している本は『海へ出るつもりじゃなかった』。ヨットに乗っていた4人のウォーカーきょうだいが、予期せぬことから嵐の外洋に出てしまい、子どもたちだけで荒れ狂う海と戦います。ランサム・サーガの最高峰といわれている物語です。
- 山猫だより「お話の会」
- 美術館の裏側(?)、日常について書いています。図書閲覧室では、週に1~2回絵本の読み聞かせをする「お話の会」を行っています。現在、お話の会のプログラムを見直し中。新しいパネルシアターを加え、もっといろいろなお話を楽しめるようにしたいと思っています。