本棚より[季刊トライホークス 2018年52号]
2018.06.18
世の中にはいろいろな本があります。古今東西、恋物語もあれば、冒険物語もあり、たくさんある本の中から、トライホークスに置かれているおすすめの本とお話を紹介します。トライホークスの本棚の中の一冊から、みなさんの本棚の一冊にしていただけたら嬉しいです。
ぼくのロボット大旅行
小さな頃から自然観察が好きで、世界各地を訪れた経験があるという松岡達 英さんの絵が魅力的です。クジラやゾウのような大きな動物から、カメムシや チョウといった昆虫まで、世界中の生き物が地域別に見開きいっぱいに登場し ます。どれも緻密に描かれ色使いも美しいので、隅々まで見ごたえがあり、読 んでいると楽しい気分になってきます。なじみのない動植物もたくさん出てき ます。しかし巻末に名前を知ることのできるページがあるので、図鑑のように 好奇心が満たされるのも嬉しいところです。懐かしい雰囲気のロボットも、二人との旅行を楽しんでいるようで可愛らしく見えてきます。
この本の動物や植物のどれか一つにでも興味が持てたら、新しい世界を知るきっかけになるような気がします。子どもたちにもぜひこの旅行に参加して、楽しんでもらいたいなと思います。
春のオルガン
彼女が抱えているモヤモヤは、多くの人にとって何かしら覚えがあるものではないでしょうか。トモミは、自分の力の及ばない様々なことに直面しながら、お母さんにも、おじいちゃんにも、そして他人である猫おばさんにもそれぞれ抱えてきた過去や思いがあるということに触れていきます。自分が世界の中心にいるのではなく、自分が世界の一部であること、お母さんたちもひとりの人間であることを自分の中に受け入れていくのです。このことは少しだけトモミを大きくし、少しですが楽にもしてくれたのです。隣の家との揉め事は解決していないし、ノラ猫も相変わらず捨てられていて、周囲は何ひとつ変わっていないのに、物語の読後感が爽やかなのは、そのためなのだと思います。
この物語をスタッフと一緒に読み直してみました。年齢層も様々、久しぶりに読み直した者も、初めて読む者もいましたが、物語の細やかな描写ひとつひとつが、読んだ者の記憶や思いを引き出したように思います。これからも本棚の一冊として、大事に紹介していきたい物語です。
季刊トライホークス 52号(内容紹介)
「季刊トライホークス」は、図書閲覧室で3ヶ月ごとに発行しているフリーペーパーです。ここでは、図書室の本を紹介するとともに、様々な分野で活躍している方に本の紹介をしていただき、図書室の枠をこえ「本」と出会うきっかけ作りをしていきたいと考えています。
- 夢中になって読んだ本
- 作家の斎藤惇夫さんに本を紹介していただきました。『冒険者たち』は、何度も映像化されているので、本だけでなく映像になじみのある方も多いと思います。『たのしい川べ』(岩波書店)を中心に紹介していただきましたが、この本を改めて読み直したくなりました。
- 連載「ジュール・ヴェルヌとその時代(第1回)」
- 映画「天空の城ラピュタ」は、19世紀後半、新しい機械の発明や技術の発達を背景に生まれた空想科学小説の影響を大きく受けています。その始祖と言われるジュール・ヴェルヌの代表作を、4回にわたってご紹介します。1回目は代表作『海底二万海里』を取り上げました。執筆者は荒俣宏さんです。
- 山猫だより「新しい映画がはじまる」
- 美術館の裏側(?)、日常について書いています。3月21日より、オリジナル短編アニメーション「毛虫のボロ」の上映が始まりました。久しぶりの新作映画を迎える美術館の様子を紹介しています。