本棚より[季刊トライホークス 2018年54号]


世の中にはいろいろな本があります。古今東西、恋物語もあれば、冒険物語もあり、たくさんある本の中から、トライホークスに置かれているおすすめの本とお話を紹介します。トライホークスの本棚の中の一冊から、みなさんの本棚の一冊にしていただけたら嬉しいです。

足音がやってくる

著者...マーガレット・マーヒー 訳者...青木由紀子 岩波書店 660円
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 バーニーは8歳になる普通の男の子です。幼いころ母親を亡くし、現在は優 しい継母のクレアと気のいい父ジョン、二人の姉妹と暮らしています。ところが母方の叔父の一人が死んだ日から気味の悪い男の子が見えたり、目の前に ない景色が浮かんできたり、誰かの足音が聞こえるようになりました。そしてお葬式で会った母方の親族が、そんなバーニーを特別な目で見ていることに気づき ます。どうやらそのわけは、行方不明の母方の叔父・コールが関係しているようでした。

 バーニーは幽霊に憑りつかれたかのように不安定になってしまいますが、家族 は優しく仲が良いので救われます。一方亡くなった母方の一族は、"不思議な力〞を持って生まれたコール叔父さんの存在を隠し、どこかぎこちない関係です。この対照的な二つの家族の描かれ方が興味深く、子どもにとって自分を受け入れて くれる家族の存在がどれほど必要なのか、ということを改めて考えさせられました。

 また、ごく普通の生活の中で非科学的で説明のつかない現象や存在に出会ったとき、人の心に芽生える「不安」「 恐れ」といった感情や、存在自体を否定してしまうような行動の危うさにも気づかせてくれます。大人たちの様子を敏感に察知して揺れるバーニーら子どもたちの姿もよく描かれていて、親や大人のあり様の大切さも問われているように感じます。

 そして、だんだんと大きくなる足音の人物はいつ現れるのか......サスペンス風の展開に緊張が続き、物語の終盤で大きく変わる展開に驚かされ、気がつけば物語の世界に引き込まれて読んでしまいました。ニュージーランドの作家で初めて国際アンデルセン賞を受賞したマーヒーは、他の作品でも超自然的なものを題材としています。この作品とあわせて楽しんでいただければと思います。

ブラジルのむかしばなし1 アマゾンのハス

編...カメの笛の会 東京子ども図書館 1,000円  ブラジルのむかしばなし1~3 各1,000円 ※日本語、ポルトガル語併記のお話集です。
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 月夜の晩、インジオの村の年老いた酋長が、子どもたちに月にまつわるお話を聞かせていました。月は、美しくたくましい騎士で、月夜の晩に部族の娘と結婚するために地上に降りてくるというのです。月と結婚した娘たちは、空に輝く星となるのです。ある時、ナイアという若く美しい娘が月に心を奪われてしまいました。部族の若者からの結婚の申し込みを次々に断り、毎晩森へ出かけては輝く月をうっとりと眺めていました。ある晩のこと、湖のほとりにやってきたナイアは湖面に映った月を見て、そこに自分の愛する人がいると思いこみ湖に飛び込んでしまったのです。それを見た月はナイアを空の星ではなく、水の中の星にしてしまいました。毎晩月に向かって大きな花びらを開くオオオニバス、それがナイアなのです。

 オオオニバスは、ブラジルのアマゾン地域に生息し、直径2~3mの大きな葉を持つ水生植物です。花は夕方から咲き始め、白からピンクへと変化をします。月にまつわるお話は世界中にありますが、ブラジルの昔話は月と星とアマゾンのハスが登場する美しいお話です。

季刊トライホークス 54号 (内容紹介)

「季刊トライホークス」は、図書閲覧室で3ヶ月ごとに発行しているフリーペーパーです。ここでは、図書室の本を紹介するとともに、様々な分野で活躍している方に本の紹介をしていただき、図書室の枠をこえ「本」と出会うきっかけ作りをしていきたいと考えています。

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夢中になって読んだ本
宮崎駿監督や美術館スタッフにもファンの多い絵本『はじめてのおつかい』の作者である筒井頼子さんに執筆していただきました。幼い頃の記憶にある本から、大人になって旦那さまが入院中にさしいれしてくれたという本まで、筒井さんの心に残っている本が紹介されています。
連載「ジュール・ヴェルヌとその時代(第3回)」
今や民間のロケットが月まで行く時代となりましたが、ヴェルヌが『月世界旅行』(「地球から月へ」と「月をまわって」の2作)を書いた19世紀後半は、"月旅行"はまだまだ空想上のお話でした。しかしヴェルヌは徹底して科学的記述にこだわります。その背景には米国での大砲の発達がありました。
山猫だより「空を見上げて」
美術館の裏側(?)、日常について書いています。今年の9月、「太陽系ウォーク」を主宰している三鷹ネットワーク大学との連携企画で、「星空観望会」を行いました。残念ながら当日は雨が降ってしまいましたが、国立天文台が開発した「4次元デジタル宇宙ビューワー"Mitaka"」を使った宇宙旅行を楽しむことができました。